オウンドメディアが気にすべき「良いPV」と「悪いPV」
■メディアのKPI、何で測る?
まむし:「となりのカインズさん」の記事って、どれもすごくキャッチーで面白いですが、 例えば会社の側から「この商品を宣伝して」みたいな話が来ることってないんですか?
与那覇さん:もちろん、社内から「今、この商品が熱い」という情報が上がってくることはあります。でも同時に「For the Customers」という理念が、社内全体に浸透しているので、企画を立てる上でもお客様起点が大前提にあります。ありがたいことに、編集部の判断を会社も信頼してくれているので、企画出しは自由に行っています。
まむし:なるほど。編集部の独立性が守られているんですね。
そうなると一方で気になるのが、媒体として負うべきKPIの部分なのですが、となりのカインズさんが追っているのは、PVになるんでしょうか。
与那覇さん:もちろん、PVも参考にしています。他には、商品紹介の記事を掲載する前後で、その商品の売り上げがどう変化したかなども分析しています。記事がきっかけで売り上げが伸びた商品もありますね。
ただ、一方でPVという数字に踊らされてはいけないとも思うんです。
極端な例を言うと、1記事で100万PVだったとしても、記事の読者の大半が不快に感じていたら、むしろ事業上はマイナスですよね。逆にPVは少なくても、読者が感銘を受けて商品を買ってくれたり、友人に勧めてくれたりしたなら、そっちの方がよっぽど価値があるはず。「質の高いPVをどれだけ集められるか」を意識して編集することが、長期的なメディアの成長に繋がるんだろうなと考えています。
■「いいPV」をどう可視化するか
まむし:確かに…と思いつつ、意地悪な質問ですみません。「PVの質」って割と計りづらいですよね。そのあたりどのように測定されているんでしょう。
与那覇さん:本当に難しい課題ですよね。理想を言えば、読者一人ひとりの行動履歴から「この記事を読んだ後に商品を買った」とか「友達に記事を紹介した」といった情報が取れれば。でも現実的にはなかなか無理がある。
だからこそ意識しているのは、読者の反応を拾い上げる努力を怠らないことですね。SNSのコメント欄をチェックしたり、ブックマークの数を確認したり、表立ったデータにはなりづらい部分も、地道に拾って蓄積していく。それが「PVの質」を可視化する我々なりの工夫とも言えます。記事のPVが伸びなくても、熱心な読者から「このジャンルの記事が更新されないか、毎日チェックしている」といったメールをいただくこともあります。PVという数字だけを見ていては見えてこない、読者の熱量を肌で感じられる瞬間ですね。
まむし:めちゃくちゃわかります。SNSでの評判なんかは、担当者ってめちゃくちゃエゴサーチしますよね。そういう裏側を何となく知っているから僕も、「このオウンドメディアはいいな」と思ったら、SNSで「これを見てこれを買った」とか、「友達に勧めた」「参考になった・面白い」とか、わざわざつぶやくようにしています。笑
そういう声が会社に届いているかどうかで媒体の勢いって変わるので、もしこれをお読みの方も、応援したいと思う媒体があればぜひ、SNSで援護射撃してあげると良いと思います。
与那覇さん)それはめちゃくちゃありがたいですね。笑
あと、これも数字に表れないのですが、社内メンバーのマインドセットの変化も、とても大切な指標だと考えています。「となりのカインズさん」を始めた当初、メンバーの顔出しはNGだったんです。それが今では多くのメンバーが積極的に取材に応じてくれるようになりました。これは社内でのメディアの浸透度を測る上で重要なポイントだと思っています。
まむし)あーーーー確かに。社内での認知や行動の変化というのは大事ですね。
いやめっちゃ面白いです。「良いPV」の価値ってまさに精緻には測定しづらいけど、だからこそ担当者が言語化して説明し続けることが大事なんでしょうね。読者の反応を一つひとつ拾って、「この記事はこういう点で良いPVを生んだ」と根気強く訴求する。そうした努力の積み重ねが欠かせないというか。
めちゃくちゃ勉強になりました。ありがとうございます!!
お知らせ
6月6日(金曜日)21時から、The Letterさん主催のイベントにオンライン登壇させていただく予定です!弁護士ドットコムやニコニコ動画ニュースで編集長を務めた亀松太郎さんや、ハフポスト日本版の開設時の編集長である松浦シゲキさんもご参加されます!!(すごい)
個人としての発信に関していろいろお話予定ですので、ぜひぜひお越しください!!
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