「スループット」という視点が、ライター編集者には必要不可欠だと思う
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目次
■メディア運営でつらい「悪循環」(ダークトライアド)
■「アウトプット」だけで戦うのは、やめよう
■AIの発達とスループットの意義
■おまけ(セミナー当日の写真/すごくうれしそうな僕の姿が見たい方はこちら)
■メディア運営でつらい悪循環(ダークトライアド)
僕は編集職としてのキャリアを、ネットニュースの記者としてスタートさせました。その後転職し、事業会社で編集部門の立ちあげ(というのか、ひとり編集部)をしたのですが、転職して数年間は本当に、目に見える成果が出せませんでした。
一記者として記事は書けるけれども、媒体の戦略を立て、それを実行したらいいのかもわからない。記事制作を外注しようにもその勘所や相場観もよくわからず。社内的にも「あの人何やっている人なんだろう」みたいな見られ方をしていましたが、自分でも成果につながる動きをとれている自信はありませんでした。
当時の悪循環(ダークトライアド)を表現すると、こんな感じ。
すみません、ダークトライアドって一度言ってみたかっただけです。
僕のふがいなさもあってか、転職後、僕が手掛けたいくつかの媒体は、更新頻度が徐々に落ちていき、廃墟のような状態にさせてしまったこともありました。
■「アウトプット」だけで戦うのは、やめよう
そんな当時、僕にとってブレークスルーだったのは、「アウトプット(記事・コンテンツ)だけで戦うことをやめた」ときでした。
ここからちょっと観念的な話になるのですが、一般的に何かモノやサービスを展開するとき、「インプット」「スループット」「アウトプット」というポイントを通過するといわれています。
■インプット
ここでいうインプットとは、「何をするか」を判断する材料を集める工程を指します。
コンテンツで例えてみると、業界のテーマを情報収集したり、インタビュー相手のことを調べたり、日々の情報収集や考察なんかが含まれるイメージです。媒体を運営している場合、「どんなコンテンツが、誰に響くのか」というデータも踏まえて企画出しをすると思うのですが、そういうことも含め、編集人材としての「知識」を蓄えるフェーズ、とも言い換えられます。
■スループット
続けて、「スループット」です。インプット・アウトプットと比べてなじみの薄い言葉だと思うのですが、、要するに「アウトプットを作る過程で生まれる成果」のことをココではさしています。
例えばコンテンツをつくろうとするとき、多くの場合は企画書をまとめ、取材をし、制作し・・・というオペレーションがスタートしていきます。この過程で生まれるもの、みたいなイメージです。
コンテンツ制作におけるスループットの代表例は、「人脈」です。
取材を何度もしていると純粋に有識者の名刺の数も増えていきますし、インタビューをすれば、「あの有識者はこういうことに興味がある」「今後こういうテーマも重要になっていきそうだ」といった最先端の情報が集まります。また、インタビューで距離が近まった相手が自社の顧客になってくれたり、有識者として媒体にアドバイスをくれる場合もあったりします。
人脈以外にも「制作スキル」「インタビュースキル」などなども、コンテンツ制作において重要な「スループット」です。ここ単体であまり日が当たることは少ないですが、意外とこういうものが、「あの媒体らしさ」や制作効率性に結びついて、競合他社にはない差別化要因につながったりするんですよね。
スループットで得られた「成果」は、その後できあがるコンテンツに全て反映されているわけではありません。が、会社や個人にとって、「見えない資産」として集積していくことになります。
例えば何か新規事業が生まれそうなとき、ヒアリングできる有識者とのコネクションが形成できるかもしれませんし、「こういうテーマ・表現が顧客(読者)には刺さるのだ」という知見は、顧客コミュニケーションを最適化する過程でも必要なスキルと言えます。この辺り、「スループットをどう事業貢献につなげるか」というのは無限に可能性があり、かなりクリエイティブなのですが、それらを戦略に織り込んでアクションしていくと、「編集部門にしかできない貢献スタイル」が見えてくるので結構おすすめです。
■アウトプット
そして最終的に生まれるのが、「アウトプット」です。
今回はコンテンツを「アウトプット」としているので、例えば記事とか、動画とかそういうものがここに入るでしょう。
多くの場合、媒体運営をするのはアウトプット(Ex:記事・動画etc…)から得られる成果(ページビューやコンバージョン)を最大化させるため。
ですが、僕がメディアを運営していて思うのは、アウトプットとしてのコンテンツから「だけ」で媒体の価値を判断されると、非常に厳しいということです。
そもそも媒体が成果(ページビューやコンバージョン)を生むようになるには時間がかかりますし、仮にこれらの成果を生むようになっても、有料広告をはじめとする刈り取り方のマーケティング施策よりも費用対効果が良いか?というとそういう場面ばかりではありません(商材による)。
というよりも前述のごとく、実はむしろスループットとして生まれた「成果」(人脈や表現スキルなど)のほうが、「コンテンツマーケティングでなければ得られない価値」だったりもする…と、個人的には強く思っています。
振り返って考えると、今回↑で挙げた「僕がつらかった時期」はまさに、アウトプットによる成果だけで戦っていたことがもったいなかったのだと思います。
コンテンツを作り続けることで磨かれた知見・教訓を軸に自分を再定義し、記事コンテンツとはまた別のアウトプットを模索するようになったことが、僕自身にとってはブレークスルーでした。
もちろん、アウトプットが大きな成果を生んでいる状態が素晴らしいのは言うまでもないのですが、「PVやCVだけ」で媒体価値を測っていたらどこかで苦しくなる、というのが僕の実体験です。
■AIの発達とスループットの意義
これからはAIを使うことによって、インプットからアウトプットを出すまでの過程が非常に効率的になっていくと思います。
一方でこれによって「スループットの大切さ」を忘れないようにしないとな、とも思ったりしています。今までであれば得られていたはずの人脈や知見、ノウハウが磨かれないまま、アウトプットだけがたくさん作られていく可能性もあるなと。それはある意味効率的なのですが、長期的に見ると「何やってんだろこれ」という状態になってしまうような気もして。
そんなこれからの時代、どうやって編集部門や媒体を運営していくのかは、またサロンを開いたりセミナーで、講演&意見交換していきたいと思っています。いやはやそれにしても、みなさんとお話をするのは本当に勉強になりますね。ご興味のある方はぜひ情報交換させてください!
今回の投稿への感想やご意見なども、X(Twitter)なりなんなりでぜひ!
サロンでは、当時僕が何を考えたかや、何をしたかお話しつつ、会場の方々からも「オウンドメディア運営でつらいと思うこと」「そこを乗り越えるために必要だ思うこと」などいろいろな意見をいただきました。どれも「確かに!!!」と思う者ばかりで、ここで紹介しきれないのが非常に残念です。。。
■おまけ
あ、そういえば今回のサロン、当日の写真はこんなかんじでした。地味に僕の顔出してしまったので、ここだけ会員登録制にしてみます笑。こうしてみると、めちゃくちゃうれしそう。